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2015/08/31[Mon]
ネタ >>
日本号きました!+「永遠の箱」蛇足
■日本号きました!
幕末Rockの一挙放送みながら掘ってたら日本号きました!ロックの絶大なパワーを感じました!このまえの超歌劇(舞台再演)も見に行ってたんですがやっぱり幕末はロックですね!!!これでまた47/47口のフルコンになったのでしばらく札貯め生活に戻ります~!!
■小ネタ「永遠の蛇足」
追記にツイッターで書いてた「永遠の箱」の蛇足的なオマケいれときます。「永遠~」で審神者がアレした後の本丸の話なんですが、完全にネタバレなうえに胸糞な仕上がりとなっております~。
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あるじさま、と、それだけを思い、五虎退は迷わず銃の引き金をひいた。かつて彼に審神者が教えた通り、手持ちの中で最も業務刀装を使い、考えるより先に侵入者の影を撃つ。
闇の中で初弾はかわされた。だが跳ねた先を見越した二発目が防具を砕き、その左肩を貫通する。あるじさま、……主様! 指示を下す審神者の声はない。心臓がやけにうるさく、三発目を放つ前に、彼は敵をやり逃した。高い壁の向こうに、少しよろめいた黒い背中が消える。
闇に消えた影を追って鯰尾が飛び出していこうとした、しかしそれを骨喰が咄嗟に掴んで止める。「間に合わない」と、彼は食い縛った歯の隙間で言う。追い掛けても間に合わない。それ以上に、今行けば、二度と間に合わない。鯰尾の目が切れそうなほど大きく見開かれ、それから、閉じた口から獣の様な声が漏れる。
侵入者が飛び出してきた部屋の中では、彼らの主が仰向けに倒れ、シャツの胸元をその血で真っ赤に染めていた。
慣れた筈の鉄錆の臭いが不気味に香る。五虎退は、震えながらその場で首を左右に振った。
一目で、助からないと分かった。刀剣よりも遥かに柔い人の体から、床一面を染めるほどの血が流れ出している。抱き起こした加州が胸の傷を手で押さえるが到底間に合うものではなく、審神者の顔からは見る間に生気が失せ、蝋の様に青白くなっていく。赤く塗られた加州の五指がわなないていた。彼がそこまで感情を剥き出しにする様を見るのは初めてだ、と、現状に追い付かない頭が思う。
脇差の二人から遅れてやって来た五虎退は、ふらふらとした足取りでようやく主を覗き込むと、ぺたりと力なくその場に座り込んだ。「あるじさま、」と消え入りそうな声で言う。主様、あるじさま、と、それだけしか言葉を見つけることができなかった。息はある。だが切れそうに続いているだけで、彼らの主の目からは、命の光がもう失せようとしている。
ゼェ、と血を吐いた唇が薄く開かれ、主を抱いた加州の腕を、紅に染まった指が掴んだ。俯いた刀の赤い瞳から、その頬に涙が落ちていた。それを拭うように、弱々しい手が彼の頬にあてられる。
「 」
審神者は加州の耳元に何かを囁くと、もう光を無くした目を細め、笑みを浮かべた。心配し、治し、世話を焼き、弱気になった五虎退を励ます時の、あの裏のない笑みだった。
主様、と彼は手を伸ばそうとした。しかしその目の前で、ずるり、と刀の頬に当てられた手が落ちる。加州がその手首を掴むが、遅かった。怒鳴りつけるような慟哭にも、堰を切った様に溢れだす嗚咽にも、閉じられた目蓋が開くことはもうなかった。ただ血の痕が残る唇が、まだうっすらと笑っている。
彼らの審神者は、そうして笑って事切れた。
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審神者が神経系統を酷使した結果の機能低下、いわゆる使用限界を迎えたので、暴走を起こす前に始末された。それが軍の放った始末屋によるものだということは明らかだった。なにせ、その役目を彼ら自身が請け負っていたのだから、そのやり口、その手順については世界で最も詳しいと言ってもいい。
表向きは怨霊相手の不運な事故として。軍部はただ白々しく遺体を片付け、審神者を亡くした彼らに新たな主の斡旋を行う旨を告げた。そこには、なんの感情も無い。ただ道具として、機構として、持ち主の居ない武器を次の使い手に分け与える、そんな単純な仕組みだけがあった。
他の刀に続き慣れ親しんだ本丸を後にする際も、五虎退はただ黙っていた。
付喪神として彼自身の練度はさほど高くない。ただ主の役に立とうという一心で身に着けた、銃火器の腕だけはあった。軍は審神者からの報告書によりそのことを知っていた。それゆえ彼も他の刀達とおなじくそれなりの評価をもって次の行先を検討されることになったのだが、ただひとつ、その強さが心底臆病な彼のただひとつの勇気、そして誇りだったとは、人間たちは少しも理解していなかった。
あるじさま、と五虎退は思う。彼の中に、主はただ一人だけだった。他の刀はどうだろう。彼が恐る恐る見上げた先では、唇を真一文字に結んで押し黙る、他の刀達の固い顔があった。一声でも掛ければ、そのまま斬られてしまいそうだ、と五虎退は金色の目を伏せる。後にも先にも、五虎退が加州の涙を見たのは、審神者が死んだあの時のみだった。
「俺は行くよ」
軍の施設に入りいよいよ別れるという段になり、やはり加州は刀を抜き、監視していた刀と軍人を斬り捨てて言った。
「その気があるなら此処で暴れろ。……俺はどんな手を使ってもあの人を取り返す。お前達には悪いけどね」
分かってるよ、と鯰尾はヒラヒラと手を振って答えた。泣き腫らしていたその目には、薄っすらと悪戯っぽい笑みのようなものが浮かんでいる。
「いいから行きなって。こっちはこっちで好き勝手やるからさ」
そう、と言って加州は背を向ける。そしてそのまま、断ち切るように足早に、振り返ることなく基地の奥へと進んでいった。今生の別れであっても礼はない、彼らしいと、五虎退は悲哀とは違った感情に目を細める。
「行っちゃった。さーて、こっから俺達はどうしよっか?」
「決まっている」
骨喰の手が柄に掛り、そのまま白刃を抜き払う。
「俺達にできることはただひとつ。……信じて、主の仇を討つ」
彼らの主を処分したのは軍の始末屋、彼らと同じ粟田口の短刀、薬研藤四郎。骨喰はその手腕を知った上で、確信に満ちてそう言った。向かい合った鯰尾の、双子のような顔にも迷いはない。彼らはとうに覚悟を決めていた。
「僕も、」と言い掛けた。しかしその瞬間、ダン、と五虎退の視界が揺れる。背後から鯰尾が、剣の柄で彼の頭を殴りつけたのだ。
「ごめん。でも審神者さんのお墓を守る奴が一人は居ないと、ね」
じゃあな、と弟の白い髪を撫で、藤四郎の兄弟達はその場から駆け去って行く。彼には追い縋る術さえもなかった。
そこは、軍のいくつかの施設を監視する為の小規模な管制室だった。加州が斬り捨てた人間の死体の向こう、痺れる体で机に手を着いた五虎退の目の前には壁一面のモニターがあり、そのうちの一つに、先へと進んでいった仲間の姿が映っていた。
既に鯰尾は薬研と相対していた。見つけ出したのか、脱走を見越して待ち構えられていたのかは分からない。主の仇を見据えた彼は躊躇うことなく刃を抜き、地を蹴った。踊るように壁を駆ける薬研に対し、数度切り結ぶ。技量より気迫が勝っていた。
五虎退が撃ち抜いた肩の傷を抉るようにして、鯰尾が手にした白刃を深々と突き刺した。が、それ以上が踏み込めない。審神者を失い霊力と刀装の補給を断たれた彼に、一人でこの短刀を殺しきる力は残っていなかった。薬研が刀を素手で掴み、両者の力が拮抗する。そして鯰尾が顔を歪めたその一瞬、薬研は肩の刃をそのままに、鯰尾の体を蹴り飛ばす。そして己の半身である短刀で、兄弟刀の首の急所、人であれば頸動脈にあたる部分を一気に、踏み込んで切り裂いた。
五虎退が見つめるモニターの中で、噴水の様に派手な血しぶきがあがる。しかしそれでなお、鯰尾の唇は笑っていた。何故だか五虎退は「性格悪い主だから」と、いう声が聞こえた気がした。主が何かを企む時、いつも先頭に立って工作をしていた二人の脇差たちの口癖だ。
鯰尾を斬った薬研の背後から、闇に紛れて息を殺していた骨喰が飛び出し、その薄い胸を深々と刺し貫いた。薬研の膝ががっくりと崩れる、しかしその瞬間、ダン、と後方から放たれた銃声に骨喰の背にも赤が散った。ぐらりと、顎が天を仰ぐ。負けても、必ず殺して帰るのだと、いつかそう漏らしていた骨喰の顔は、やはり笑っているように見えた。
大きな瞳を見開いて、あるじさま、と五虎退はただ呟いた。涙が頬を伝っていたが、しかし悲しいだけではない。なにか苦いもの、おそらくは悔しさの萌芽であろうものが、彼の大人しい胸の中で早鐘のように打っていた。
彼は手の平に爪が食い込むほど拳を強く握りしめると、やがて、迷いを捨てた顔でその部屋を後にする。
五虎退が去った後、モニターの中央には神に等しい地位まで祀り上げられた天下五剣の一、三日月宗近に相対する、加州清光の姿が映し出されていた。
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「いよいよですか」
音もなく現れた薬研に対し、その審神者は驚いた様子もなくそう言った。月の無い夜、離れに位置するその部屋には始末屋以外の刀剣の姿がない。覚悟していたのか、それとも諦めていたのか。審神者の顔には些か緊張したところもなく、「こんばんは」という口には普段と同じ薄い笑みが浮かんでいた。
「最後を告げるのが君であってくれて嬉しいですよ、薬研くん」
「……呆れた態度だ。知ってたか?」
「最近どうにも頭が痛くて、まともに物も考えられなくなっていたんです。この辺りが潮時、軍の判断はまっこと正確だと思いますよ」
だから気に病むな、と言われているように聞こえ、始末屋は小さく眉根を寄せた。恨まれるのには慣れている。どうせなら泣き叫ばれる方がまだ気が楽だ。それを覚悟の上でわざわざ声を掛けたが、目に見える審神者の態度は平素と少しも変わらなかった。
「大丈夫ですよ。私も、君と同じ穴のムジナです」
そう言って、審神者は傍らにおいてあった銃を手に取った。
「そちらの手を汚すには及びません。……万が一、あの子達がバカな真似をするとも限りませんから」
「いいのか?」
「もう、仕方のないことですから。私はこれでいいんです。私のせいであの子達が傷つく前に、終わりにします」
「……そうか、なら」
頷くが否や、薬研は審神者が握る銃を力ずくで奪い取った。腕を捻りあげる格好で、それ以上の動きを阻む。審神者は目を細めたが、その腕に力は入っていなかった。壊れかけの審神者の眼の奥は、どこかガラス玉じみていた。見えていないのだ、と薬研は悟る。他の数多の審神者同様、心身が磨り減った人間にはもう世界のどんな手も届かない。
「悪く思うなよ、大将。ここからは俺の勝手だ」
短刀が逆手に持ち変えられる。その白い刀身に、青白い頬が映っていた。
「……最後に、兄弟達に、」
会ってやってくれないか、と。答えを聞かぬ間にぐざり、胸の脂肪を越え、骨の隙間から臓腑の奥へ、ゆっくりと刃の切っ先が割り入っていく。
短刀を抜くと、吹き出した鮮血が宙に咲く。赤の飛沫に汚れた顔で、審神者は僅かに表情を動かしたようだった。
そうして薬研は弾かれたように身を退くと、部屋にあった家具を思い切り引き倒し、外へと出た。審神者が事切れるまでにはまだ時間がある。物音で異変に気付いた刀達が駆けつければ、あるいは間に合うかも知れない。わざと急所を外した短刀を振り、べったりと着いた審神者の血を払う。
同情か、感傷か、あるいは迷いか。冷徹に仕事をこなしてきた彼の薄紫の目は、いま僅かに歪められていた。
近づいてくる気配に地を蹴り、屋根の上へと膝を着く。そして疾風の様に闇夜へ消える彼の背に、一発の銃声が放たれた。
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