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2015/09/27[Sun]
ネタ >> テニプリ文化祭+小話
■文化祭にいってきました
狂気の3次元イベント、テニプリ文化祭にいってきました。多くは語りませんがまっこと楽しかったです。さちんとみなじゅんと甲斐田さんのトークショー(正統派イケメン役3人によるテニプリ女子会)(ご本人方談)も最高でした!喉から勝手に出てくるぴぎゃり!最高でした!

■小ネタ「白石と幸村」
ツイッターでエサ(お題)をもらったので書きました。妹要素は無いです。追記からどうぞ~。


2年の夏、全国大会準決勝、ネットの向こう側で「君、部長なんだね」とその男は柔和に微笑んだ。
四天宝寺は立海大附属に3-0のストレート負け、俺は結局、その男とS1で戦うことは叶わなかった。
全力を尽くして負けた部員の為、俺は笑わなくてはいけなかった。だが悔しさが震えとなって喉元まで競り上げ、笑うことも、何を言う事もできなかった。
俺は、才能は、努力で超越できると信じていた。突出した個性を持たぬのなら完全を。コートの上でポイントを奪う、それを成す上で、どのような技も力もシンプルな基本からは逃れようがない。だから俺は完全を求めた。欠落の無い完璧な姿を求め、勝つことでそれを証明しようと考えた。
しかし戦うこともできないのか、と。
全国大会は団体戦だ。個としての試合が戦術なら、自分以外に2つの勝利を掴めるチームを手にすることは戦略だ。2年の春、俺はこの四天宝寺を背に負った。自分とは違い突出した個性を伸ばしに伸ばした連中を率いて、勝とう、と。
コートの向こう側の黄金色の集団、王者の名を関するチームにおいてさらに上、神の子と謳われたその男は、まるで苦労など何一つ知らないような顔で立っていた。天賦の才、派手な技などひとつも弄さずとも勝つ、対戦相手に微塵の希望さえ与えずに屈服されるその“完全”な試合ぶり。勝ちたかった、それを証明する為に戦いたかった。
羨望から歪めた訳ではない。しかし俺の眼に映った幸村は高潔でありながら傲慢さを覗かせていた。既に公式戦全勝、中学テニス界最強の名を欲しいままにしていながら、一部員として三年生の後に続く。認められていない訳ではないだろう、ならばあえて甘んじているのだろうか。全てを見透かしたような瞳で静かに佇むその姿は、全国大会の熱気の中にあって、どこか退屈そうにも見えた。
「白石くん、俺は君が羨ましいよ」
焦がす様な日差しの向こう、幸村の顔が影に沈む。
「君は勝利が欲しいんだろう。自分を勝たせ、チームを勝たせる為の強さを求めてきたんだろう?その先にはきっと、喜び合える顔があると信じて」
違うと言うのかと問う俺に対し、傲岸不遜に否定も肯定もしなかった。
「俺が欲しいのは、真に王者としての立海大。君とは順序が逆なんだよ」
その年の王者でありながらチームを求める、その矛盾。その真意に気付けたのは俺が真逆の立場に居たからか、それとも、神の子が僅かに覗かせた瞳の揺らぎのせいか、夏の陽炎のようなそれのせいか。
「……いったい、君には何が見えているのかな」
「少なくとも、お前とはちゃうものやろうな」
「なるほど、主観だけは死んでも手に入らない。無い物ねだりとは良く言ったものだね」
その悪意も善意も超えた視線に、「おまえは」と、言い掛けて諦めた。
恐らくは足りないのだ、と、悟っていた。個人としての栄華を極めながら、その両脇に控えている同じ三強の二人だけではまだ足りない。神の子として見下ろす男が、真に肩を並べて誇れるチームには、この年の立海大ではまだ認められていないのだ。きっとアイツも俺と同じ完璧主義者、だからこれは同族の痛み分けなのかもしれない。
チームの為に一勝をと足掻く俺を眺めながら、常勝の神の子は果たして自分の一勝に足るチームかどうかと考えていた。嫌味に尽きる、だがその孤独は理解できない訳ではない。それにどれだけ苦痛が伴おうと、時に人に笑われ非難されようと、子供じみた愚直さで、俺達はただ、心の底から誇れるものが、欲しいのだ。

その年の冬、幸村が倒れたと風の噂で聞いた時、どうしてだか俺は空を仰いだ。冬の濁った空が風に吹かれて渦を巻いている。すべては業だ、と感じていた。


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